■自己破産しても処分されない財産
●「自由財産」について
破産した場合であっても、破産者の財産のうちで破産財団に属さず、手元に残される財産を
自由財産といいます。
したがって自由財産は、
破産者が自分で自由に管理処分できることになります。
新破産法は債務者の経済的再起更生を充実させるため、
その範囲を大幅に拡大しました。
従来の破産法においては、自由財産となる金銭の額については、
標準的な世帯の1ヶ月間の必要生計費(民事執行法131条3号)を基準として政令で定める額(33万円)の2ヶ月分(66万円)
とされていました。新しい破産法では、破産者の生活の維持を図るため、3ヶ月分に相当する額(99万円)の金銭を自由財産とし、
破産者の経済的生活の再生の機会を更に確保することとしています。
また、新破産法は、自由財産拡張制度を新設し、裁判所が、
管財人の意見を聞いた上で、破産者の生活の状況や破産者が収入を得る見込みの有無等の個別の事情に応じて、
自由財産の範囲を拡張することができることとしました。

◆現金(金銭) 99万円
現金については、必要生活費の3ヶ月分 99万円
現金99万円は本来的な自由財産ですから、
自由財産拡張の申立ては不要です。
但し、あくまで現金での所持であり、預貯金として持っていた場合は、
本来的な自由財産ではないので、自由財産拡張の対象となります。
(裁判所によっては、預金も現金として扱っている場合もあります。)
◆金銭以外で差押が禁止された財産
●民事執行法上の差押禁止動産
①債務者等の生活に欠くことが出来ない衣服、寝具、家具、台所用品、畳及び建具
②債務者等の1ヶ月間の生活に必要な食料・燃料
③主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、
労役の用に供する家畜及びその飼料ならびに次の収穫まで農業を続行するために
欠くことができない種子その他これに類する農産物
④主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕または養殖に欠くことが
できない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
⑤技術者・職人・労務者その他の主として自己の知的または肉体的な労働により職業
または営業に従事する者のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品
を除く)
⑥実印その他の印で職業又は生活に欠くことができない物
⑦仏像、位牌その他礼拝又は祭祀に直接供するため欠くことができない物
⑧債務者に必要な系譜、日記、商業帳簿およびこれらに類する書類
⑨債務者又はその親族が受けた勲章その他の名誉を表章する物
⑩債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
⑪発明又は著作に係る物で、まだ公表していないもの
⑫債務者等に必要な義足その他の身体の補足に供するもの
⑬建物その他の工作物について、災害の防止または保安のため法令の規定により設備
しなければならない消防用の機械または器具、避難器具その他の備品
◆その他差押禁止債権
①生活保護受給権 (生活保護法58)
②各種年金受給権 (国年法24,厚年法41,確定給付企年法34,確定拠出年法32)
老齢基礎年金,障害基礎年金,遺族基礎年金,付加年金、寡婦年金及び死亡一時金
老齢厚生年金,障害厚生年金及び障害手当金,遺族厚生年金
老齢給付金,脱退一時金,障害給付金,遺族給付金,死亡一時金など
③小規模企業共済受給権 (小規模企業共済法15)
④中小企業退職金共済受給権 (中小企業退職金共済法20)
◆その他の自由財産
破産管財人が破産財団から放棄した財産や、破産手続開始決定後に新たに取得した財産(新得財産)も、
自由財産となります。
ただし、その取得原因が破産手続開始決定前にあるものは、原則破産財団に属します。

自家用車を残せる可能性アリ!!
自動車を所有している場合は、処分の対象になります。
しかし処分(査定)価格がトータルで20万円以下の財産については処分の対象外になります。他の財産を含め、
総額が99万円以下であれば自動車を残せる可能性があります。
(裁判所によっては扱いが異なる場合があります)。なお、
ローンで購入した自動車はローン会社が所有権を留保している場合があり、その場合は、
その自動車の価値にかかわらず車をローン会社に返還しなければなりません。
その場合は、
自動車は売却されて残債務の返済に充てられるのが原則ですが、自動車を手放すことができないというときには、債権者と交渉して、
誰かにローンの連帯債務者(重畳的債務引受)になってもらいその者にローンを支払ってもらう、または、
保証人においてローンの支払いを続けるから回収しないようにしてもらう、あるいは、一旦引渡しをした後、
親族に買い取ってもらうということが可能な場合もあります。
第三者弁済として、親族や友人に一括支払いをしてもらった上で、車のローン会社に代わって債権者として届け出るという方法も考えられます。
諦めずに、相談員に尋ねてください。きっといい方法が見つかるでしょう。
所有権留保について、留保した所有権を別除権として行使することの可否が問題になりました。⇒ こちらを参考 これにより、さらに自家用車を残せる可能性が高くなりました。詳しくは相談員に聞いて下さい。